肺がん検診の内容と解説
市町村が住民を対象に実施している結核・肺がん検診として,胸部X線,喫煙量が多くリスクの高いグループに対する喀痰細胞診を実施し,一部市町村ではヘリカルCT検診車による肺がん検診も行っています。また,事業所及び学校などを対象に,検診車による巡回検診や施設内における胸部X線検査又はオプション検査で喀痰細胞診及びCT検査を行っています。
▲ 胸部検診車
▲ 胸部撮影時
健診内容の解説
▲ 図1
胸部X線検査は主として肺の末梢(表面に近い場所)の早期肺がんを,喀痰細胞診は主として胸部レントゲン写真だけでは判りにくい場所にある気管や太い気管支に発生する早期肺がんを発見するために役立っています(図1)。
●胸部Ⅹ線
病気の疑いのある種別について,X線に写る「陰影」の形や大きさ等の見え方で判別します。まず撮影したX線画像を呼吸器,放射線科専門の2名以上の医師がそれぞれ画像を読影します(これをダブルチェックといいます)。読影結果の判定は,「肺癌集団検診の手引き」(日本肺癌学会集団検診委員会編)に基づき行われ,有所見の方は比較読影を行います。 比較読影は過去に撮影したX線画像と比較し,新しい陰影なのか,以前からの陰影の残存なのか,あるいは以前からの陰影が拡大したものかを判断します。
●喀痰細胞診
▲正常細胞
▲がん細胞
「なぜ,喀痰検査でがんを見つけることができるか?」それは,気管や太い気管支にできるがんは扁平上皮がん(皮膚の組織によく似た構造をもつがん)という種類が大部分を占めています。この種類のがんは皮膚から垢が落ちるように痰の中にがん細胞が剥がれ落ちやすいため,この検査でがんを検出することができます。また,気管や太い気管支にできるがんは,喫煙との関連性が非常に強いことから,高危険群とされる該当者のみに行うことが茨城県肺がん検診実施指針によって規定されています。 喀痰細胞診の方法は,まず保存液(がん細胞を変性しないで長期間保存するための液体)の入った容器に早朝の起床時の痰を三日間にわたり採ってもらいます。次にその痰を処理してから日本臨床細胞学会認定の細胞診専門医及び細胞検査士によって顕微鏡でよく調べます。
●ヘリカルCT検査
▲ヘリカルCT
▲ヘリカルCT撮影
胸部ヘリカルCTは,胸部X線正面画像では発見困難な部位,すなわち,心臓や骨などに重なるところに存在する肺がんや,胸部X線検査では異常と認められないような小さな肺がんを早期に発見できます。検診の方法は,寝台に横になり息を止めている間に,寝台が一定の速度で移動しながら胸部をらせん状にスキャンし,肺の隅々まで撮影します。